長年の夢であった水上飛行機の免許を取得しにアラスカに行ってからもう2ヶ月が過ぎようとしています。今回は私が体験してきたその水上機訓練の様子をご紹介したいと思います。
成田空港からシアトル経由でアラスカ州アンカレッジに降り立った私はまず世界最大級のSeaplane BaseのあるLake Hoodでのんびりと様々な水上飛行機が離発着する様子をBarでグラスを傾けながら癒しの一時を過ごしました。
翌朝5時にはすでに明るくなった空を疎みながら朝一番のタルキートナ行きのアラスカ鉄道に飛び乗り、アラスカ原野を時速40キロほどで進む車窓からの風景を眺めながら、これから操縦できる憧れの水上飛行機に思いを馳せ、ガタゴト揺られること3時間、タルキートナ駅に着くと、今回お世話なるリー夫婦が迎えにきてくれていました。挨拶と自己紹介を済ませた後、今回の旅の目的(水上機免許取得とDHC-2 Beaver機での遊覧)を告げると、Mt. Denali(マッキンリー山)がこんなに良く見える日はめったにないからと急遽最終日に予定していた氷河着陸ツアーに前倒しで参加することになりました。リーさんの計らいにより念願のBeaver機の前席に座ることができ、5000メートル級の山々に何万年も前から存在するという氷河の上を優雅に遊覧し、また実際に氷河の上に着陸し、写真を撮り、再び離陸するというアラスカならではの体験をすることができました。
翌日、いよいよ訓練開始です。訓練に使用するPiper Pacer機の性能、計器類、フロート器具、エマージェンシー器具等の説明を受けた後コクピットの中に。普段見慣れた計器類ばかりであるため別段戸惑うことはなく、唯一ウォーターラダーと呼ばれるフロート後部に取り付けられている水上でのタキシングを容易にしてくれる装置の操作を習い、いざ離陸ポイントへ。徐々にフルパワーにした後は「roll onto the step」状態(尾輪式の飛行機で加速して行き尾輪が持ち上がったような状態に似ている)にしてしばらくその体勢を維持していると徐々に抵抗が少なくなっていき、ついにLift Off。10年以上前に初めてC172で飛び上がった時のことがふとよみがえる瞬間でした。一度上空に上がってしまうと普通の固定翼機と同じような感覚で飛べたものの、久しぶりにやるstallやsteep turnなどのAir Work等はぼろぼろで、錆びついた腕に「こんなはずでは…」などと悔しい思いをしながらも段々慣れていきました。そしてようやく着陸の練習です。教官のお手本を見た後自分で教官の指示通りにやってみると意外と簡単?にできたような気がしました。調子に乗ってその後何度か着陸の練習をしていく内にその「奥深さ」を実感することになりますが、それこそ「望むところ」であり、まさに充実感いっぱいの訓練初日でした。
訓練2日目は「rough water(波の荒い水面), glassy water(波の一切ない鏡のような水面), confined area(離陸距離が充分とれない狭い場所)」など特殊な状況、場所を想定した訓練に入りました。教本などで読んで理解したつもりでもなかなかやってみるとうまくいかないものでコツをつかむまでには時間を要しました。
訓練3日目は早朝に教官と1フライト飛んでもらって最後の仕上げを行い、午後はもうチェックライド(実地試験)でした。個人所有のAeronca Champ機で現れた強面の試験官は挨拶もそこそこに今日の実地試験での留意点を3つ
1. Don’t get me wet.(私が濡れることのないように)
2. Safety First.(安全第一)
3. Let’s learn something together today.(今日は一緒に何か学んで帰りましょう)
と最高の笑顔で言い放った初老の試験官はすごくカッコ良く一瞬でファンになりました。
さて肝心の試験はどうだったかと言うと、試験官の粋な気配りもあってか緊張することもなく、無事合格することができました。
帰国当日は一緒に訓練を受けて合格したデーブに、こちらも個人所有の2005年製C206(G1000装備)でアンカレッジ空港まで送ってもらい、「個人で飛行機を所有できたらどんなに素敵だろう」という思いを一層深めることとなりました。
TVAでは水上飛行機の免許取得に関心のある方を対象に毎年5月中旬から9月中旬までの期間で参加者を募ります。この訓練では教官が同行して丁寧に訓練のサポートをいたします。またご家族を連れて訓練をしながらアラスカの大自然を堪能できる滞在型の旅行としてもお勧めです。興味のある方はツアー概要のパンフレットをお送りいたしますので是非弊社までご連絡ください。
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