(出張日誌つづき)翌朝 ホテルを引き払い8時に空港に行く。本日は帰国日、この素晴しい飛行機を自分でロッキーを越えて飛ばすつもりで米国入りしましたが時間切れとなりました。
飛行機乗りなら誰もが飛んでみたいと思うフライトを断念し、2人に任せて帰ることとしました。
最後に帰国前に計器飛行関連の検査を実施。約1時間半 計器進入を繰り返し GPS 自動操縦装置各種計器の確認を行いました。Approaching Minimum, Check,Minimum, Landing. いつも聞きなれたコールアウトの中で着陸。今回の米国での飛行をすべて完了。
荷物をまとめてコンコースへ 嶋、川上両教官の見送りでCRJに搭乗。一見、計器飛行気象条件の最低条件をきっていると思えるほどの低視程。 着席して1分もたたないうちに 機内アナウンスで 荷物をもってすぐ飛行機から降りるようにとせきたてるようなアナウス。??? !!!!
竜巻警報が出たため緊急避難!!!
空港の地下室 (元はシェルターだったと思われる 黄色地に扇が三つ円を作ったマークが気になる。)に空港関係者、TSA、警察と乗客がいっせいに避難。 空港のロビーのTVニュースでお天気レーダー画像が映っていたが空港の周りがエコーで真っ赤になっている。 地下室に入ると急に気圧が下がるのがわかる。 これは本当に竜巻に巻き込まれるぞと覚悟して地下室で待機。 あの二人の教官は大丈夫だろうか?ドコモの携帯電話で川上教官を呼び出す。呼び出し音はなるけれども出ない。
まさかあの美しい飛行機もろとも.......
気を取り直して嶋教官に電話をする。しばらくして『今いろいろ調べています。機体は格納庫に入れて安全を確保してあります。我々はこのFBOにとどまり、待機します。 この建物は気象官署だったので建物は頑丈にできているので大丈夫です。』 さすが彼らは手際がよい。『では後ほど。』 15分間 地下室でみなが思い思いに家族や友人に電話をしている。 中には遺言じみたことをいっている人もいる。
縁起でもない。。。。
20分後警報解除。 地上のロビーに戻ると嶋教官が迎えにきていました。 『この飛行機は故障で出ないです。どうします?』とささやく。これが飛ばないと明日の日本のスケジュールに間に合わないではないか。そして、それから直ぐに航空会社のカウンターから 機材故障によりフライトがキャンセルであることを告げられる。1時間後に隣の飛行場にバスで1時間移動してミネアポリスに回送するとのこと。それではとても帰国便に間に合わない。このままでは東京の重要な仕事にいくつか穴を開けてしまう。
嶋教官が 「悪魔の微笑」とともに『ウチの飛行機で行きますかあ!?』 と幡随院長兵衛のように自信に満ちた声でささやく。
行けるのか? 天気は?竜巻は? 他の航空機は? 燃料は? 機体重量は?空港は?
すべてを確認して安全運航に支障がないか?矢継ぎ早に質問すると・・ 「準備完了!」と小気味よい返事が返ってきた。 『よしそれでは(自社機で)行きましょう。』 説明は機上で聞くといい、まぶしいばかりのアローに飛び乗りました。 5分後には離陸をして機上の人となっていました。 私が質問攻めにする前に、嶋教官が状況を説明し始める。『サンダーストームとサンダーストームの間隔は10マイルぐらいで、その間の天候はとてもよくVMC(有視界飛行状況)で問題は特にありません。あれ以来、竜巻の出そうなエコーや注意報は飛行ルートにはありません。同じコースをサイラス単発機が15分先行していますが同じ使用周波数で何も言ってこないので支障はないと判断します。』 離陸すると天気はやはり良かった。視程もよい。多少大気は不安定だけれどこれなら大丈夫。それに300%以上信頼を寄せる優秀なTVAパイロットがここにいる。
嶋教官から後席の川上教官へ「最短コースの針路はいくつか」と質問。
「コース345です。」と自信に満ちた声で川上教官がこたえる。
? GPS装備機だから最短コースはGPSを見れば明白なはず。 その質問の趣旨は?
教官訓練 嶋教官が川上教官の訓練をさりげなくしているようです。フライトを1本1本大事にするTVAの文化が定着してきた気がしました。
この速度だと2時間弱で到着予定となる。左から(西から)大きなサンダーストームが近づき行く手を覆いかぶす勢いで接近してくる。 無線機からはバチバチと静電気が放電する音が聞こえる。雹(ひょう)は大丈夫かなと聞くと『大丈夫だと思います。あれば緑色に見えるはずなので大丈夫です』 と即答がかえる。 ぴしぴし 閃光が左翼2マイル弱の距離で走る。 強い青白い稲光が雲から地上に力強く放電しています。
エンジンは快調。飛行機の操縦、空からのすばらしい景色、すばらしい仲間とのフライト、今回も最高のフライトです。
以前 私の最も尊敬する方の一人でB-767の教官機長でいわゆる操縦士として超越した方から 雷雲の直下は140kt以下なら被雷する可能性が低いという話をされていたのを想いだしました。
今回は、機体はまだ雷雲の下を通過しているわけではないので150kt前後でとばしました。
地上をよく見ると 風力発電の風車が其処ここに設置されている。ミネアポリスのクラスBに入る。 国際線の出発まで1時間10分 着陸まで約10分。 FBO(空港で燃料を販売したり航空機のサービスをしたり、面倒を見てくれる業者)を無線呼び出し、国際線ターミナルまで、車を回すよう手配を頼もうとするが応答せず。 無事に11分後に着陸。 駐機するとともに飛行機から脱兎のごとく飛び出し、荷物をつかみ FBOの車で5分後にN航空のカウンターに到着。 案の定荷物はチェックインできず。そのままゲートまで行きかろうじてタッチの差で搭乗できた。
搭乗できて一息できるはずだった。
ん! ダブルブッキング?!!!
航空会社が先ほど搭乗するはずのフライトがキャンセルになったので私の座席を他の乗客に割り当ててしまったらしい。 N航空には確実にミネアポリスに到着する旨を伝えていたのに、「やはり ネ」という感じの対応。 しばらくして客室乗務員が調整して別のシートをアサインしてきたがシートに座ると明らかに座席がゆがんでおりすわり心地が悪い。毛布を工夫してその上に座り、気を失ったように眠りに落ちました。 過密スケジュールの出張はこれにて終了。 明日からは 別の過密スケジュールが待っています。。。。
TVAのアロー是非グアムに見に来てください。乗ってみてください。
そのときこのブログを読んだ方は、ちらっとアメリカ本土でのわれわれのそんなやりとりを想像して笑ってください。
現在はアローは整備調整中、10月下旬あたりにグアムで運航開始予定です。
ご期待ください。
小林 弥
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