翌日 6時半に起きて朝食をとり、7時半に空港に出向く。 本日は飛行機のディーラーとの試験飛行と慣熟飛行を予定している。
飛行機が格納庫から出されて飛行準備ができる前までに、航空法(FAR)の91条103項のPreflight Actionを完了し飛行機の基本性能と操作手順を復習する。
8時30分 FBOの建物の前に機体が出されてきた。
第一印象は
「なんて品のいい飛行機なのだろう・・・!!」
プリフライトで操縦席に入る。新品の革張りシートのいい香りがする。BMW500シリーズのイメージでサイラスという飛行機は作られたというが、この飛行機も大手製造会社の役員が個人的に維持管理されてきただけあって、重役仕様を感じさせる。うむ。外見の塗装はグアムのトレンド機(セスナ)と同じブルーと白の塗装でしかもメタリック。 一見すると新造機にみえるぞ。 これは人目を引く。見た目は好感触で本当にため息が出るほど素晴らしい。
でも、我が社は見栄えより中身と性能品質重視の社風です。 外見に惑わされず検査手順を進めなければ。しっかり飛んで命を預けられるかどうかの見極めを始めました。
いよいよ、エンジン始動。 エンジンは快調、心なしか1500回転あたりにかすかな振動を感じるもランナップで解消。滑走路の端までタクシーした感じは良好。久々の低翼小型機なので少し緊張気味になっている。Cleared for Takeoff 管制塔から明瞭な管制承認がおりる。操縦席を一回り確認してスロットルを進める。エンジンが滑らかに吹き上がる。ブレーキを外し加速する。操縦舵輪はセスナより重めだ。シリコングリースのスプレーが必要だな、などと思いながら離陸。Positive Rate を確認し、Gear Up 車輪が軽やかに機体の中に格納された。いい感じだ。車輪があがると加速が増す。ここで最大継続出力以下に出力を落とす。
ぐんぐん上昇していく。 あっという間に管制圏を出て訓練空域へ。4500FTで急旋回、失速、車輪の上げ降ろしを確認。飛行機を優しくぶん回していく。その際にエンジンと機体からの音や振動、その他の変化に注意深く気を配る。事業用操縦士の実地試験科目のほとんどを実施してみる。
飛行機の飛びの部分は満点。文句なしだ。よく整備されている。計器を一つ一つすべてが正確に適切に機能しているかを確認していく。以前航空会社でB-767の耐空検査に参加した経験が大変役に立った。
離着陸を何回か繰り返し、試験飛行終了。
スポットインしてエンジン停止。
セキュアー完了。
川上教官が緊張した面持ちで近づいてくる。
「いかがですか?」川上教官が心配そうにたずねる。
相変わらず怖い顔をしているのかなと反省しながら 『問題なしです。ただいくつか調整と整備が必要になります。』と答える。
整備調整項目は10項目。特に大きな問題はないが、米国本土内で整備したり新たな装備をしたほうがよいと思われるものは、すべて米国内で実施すると決めていたので、早速ディーラーに修理整備できるところはすべて修理整備すよう細部にわたり指示をする。
1時間半の試験飛行完了。
「今日はビールがうまいぞ、つまみを調達しよう。」
次回 嶋支社長お迎えシカゴフライトに続く
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